紙はくろやぎが食べる。

ゆっくりと更新して行きます。ただの自己満足です。

ハッピーバレンタイン

「ウルリカちゃん!ウルリカちゃん!バレンタインだよ!バレンタインッデー!!!」


「うるせーですよ。静かにしろですよ。ライア。」

「なに言ってるの!!こういう小説に載るの初めてなんだよ⁉︎もっとテンションあげてこーよー!!」

「メタ発言ですか。」

ウルリカちゃんは部屋に敷いてあるカーペットの上でゴロゴロしてゴマアザラシ状態になっている。可愛いと思う。口調があれだけど…

「俺にチョコくれんじゃなかったのー??ww」

「だれがあんたみたいな嘘つきにあげるんですか。自惚れてんじゃねー。ですよ。」

「ひゃーww冗談だってwwじょーだんっ☆w」

ウルリカちゃんはこちらをじっと冷たい目で見てくる。普通の人の目と違う目。それもそうだ。だってウルリカちゃんは……

「あ…」

ウルリカちゃんがそう声を上げると、彼女は宙に浮いていた。片足を持ち上げられて、逆さまの状態。
ウルリカちゃんはムスッとした顔をしてこういった。

「いたずらしないで。放せっつーのですよ。」

じたばたと暴れているウルリカちゃん。俺にはどうすることもできない。だって、ウルリカちゃんを持ち上げている犯人に触ることもできないし。それに、俺は強化ガラスの向こう側にいる。監視室と言えばいいのかな?

「あはははっww頑張れーw」

「…っ」

ようやく放したみたいで、ウルリカちゃんは地面に着地する。綺麗に着地できたみたいだ。

「やんちゃだねーww君のお友達ww」

「お友達じゃねー。ですよ」

「チョコ作れーってことじゃない?wwwカカオからwww」

「……………そんなに欲しいんだったら、無敵のチートで最高最強可愛い悪魔ちゃんー☆(棒読み)にでももらったらいいんじゃないですか。」

「ぼwうwよwみwwwwあの子ねぇ…昔は可愛かったんだけどねぇww」

そうそう。昔は可愛かったよ。昔は。ここ、大切ね。今じゃ悪魔だし。「悪魔ちゃん可愛いっ☆」とか、「悪魔ちゃんに不可能はなーい☆」とか。なんだよこのキャラは…そんなキャラ、ニジェミールだけでいいよ…。

「…?昔って言うと、知り合いみたいな言い方じゃねーか。ですよ。」

「ん?あー、そうなっちゃうかーwあながち、間違ってないけどね。」

「そうなるとあなた、かなりの年寄りですよね?見た目19歳っぽいですけど。いや、それより下っぽい感じ…」

「なんでだろうねーwおかしいねーwww」

俺が話をごまかすと、ウルリカちゃんは気になったのか、俺の年齢やら、種族やら色々問いただす。

「あなたは一体何者なんですか。」

「にんげーんww」

「嘘つかないでください。」

「嘘つかないと死んじゃうからねwそれは無理な話だなぁwww」

「…………。」

「もー、バレンタイン関係なくなっちゃうでしょー?wイベント楽しいんだからね!!」

「…イベント。」

ウルリカちゃんはポツリと呟いた。

「こーんなジメジメしてそうな部屋に閉じこもってないでさー。お外でよーお外!!!」

「…見張り。」

「ん?」

「見張りがいるんですよ。こんな体質だから、無闇に外なんて出れるはずありませんから。」

俺は、ウルリカちゃんに話しかけるマイクを持ちながら、隣の人を見る。見張りの人がいる。その人は、俺を睨んでいた。俺はその人に笑ってごまかして、ガラスの向こうにいるウルリカちゃんに向き直った。

「んー、そっか。ならしょうがないね。ごめんね。お邪魔しましたー。」

マイクを置いて、ドアを開けて出ようとする。一瞬ウルリカちゃんが悲しそうな顔をした気がした。部屋から出た後、ドアに背を向けながら考える。どうすればウルリカちゃんをここから出して、外に出してあげれるのか…。せっかくの女の子のイベントなのに、あんな部屋で監視されながら過ごすなんて嫌に決まってるよね。

「ううん….あ、嘘をつけばいいんだ。」

俺は、ロビーに行った。ここなら人がたくさんいる。そして俺は大声で嘘をついた。

「あのねー!!この街に、この建物にね!!魔物がたくさん来るみたいだよー!みんな急いで!死んじゃうよー?」

一斉に俺の方を見る。俺につけない嘘はないから、きっと信じるはずに決まっている。いや、絶対に信じる。そうなっているから僕の言葉は。

みんなはざわつき始め、慌ただしく走る。なにか対策を考えているらしい。
俺は、笑ってしまうのを我慢して、ウルリカちゃんがいる部屋に戻る。見張りをしていた人もいなくなっている。チャンスだと思って、監視室のもう一つのドアに手をかけるが、開かない。このドアの向こうにウルリカがいるのに。よく見ると、暗号を打つ場所があった。暗号分からないから、マイクを持ってウルリカちゃんに話しかける。

「ねぇねぇ、君の力でドアを開けて欲しいんだ。外に出たいでしょ?」

「….別に、出たくねーですけど。まぁいいです。」

照れ隠しでそんなことを言っているのはわかる。
バンって音がして、ドアは開いた。そこからクリーム色の髪をしたウルリカちゃんが出てくる。

「早く行くよ!!」

俺はウルリカちゃんの腕を掴んで走って外に出る。ようやく外にでれた。追っ手も来なかった。上手くいったようだ。それから俺たちは、ショコラケーキを作って、二人で一緒に食べた。

「…バレンタインってこんなだったんですか?」

ほっぺにチョコをつけたまま喋っている。ちょっと笑いそうになったけど、堪えた。

「んー?ちょっと違うかもw俺もケーキ作るの手伝っちゃったしw男の子は作らないお約束でしょ?こういうのw」

でも、感謝の気持ちが伝わってればいいかな。逆チョコになっちゃうけどw

「ふーん。まぁ、これもこれで….….悪くねー、です」

ふいっとそっぽを向いた。これも照れ隠し。ちょっと面白いのでからかうことにした。

「照れちゃってるのー?かわいーwww」

「かっ!勘違いすんなですよ!!別に、深い意味はねー…ですよ。」

「はいはいw分かってますってw」

「いや、ぜってー分かってねーです!」

分かるまでけちょんけちょんです。とか言ってまたケーキを食べ始めた。少し俺は笑って、ケーキを食べる。











「なーんて事あったよねーww」

「覚えてねーですよ。」

「覚えてるくせにwww」

「はぁ、私は帰りますからね。」

「うん。じゃあ、またね?」

ウルリカちゃんは後ろを向いて、歩き始めるが、またこちらを向きなおして何かを俺の方に投げてきた。

「….….貴方、全然年取ってねーですね。」

そう言って、走って行ってしまった。投げたものは、可愛くラッピングされた何かだった。手紙も添えてある。

「えーっと?『いつもお世話になってるですよ。とか書くと思いましたか?バカじゃねーのですよ。』….ww」

あまりにもウルリカちゃんらしくて笑ってしまった。昔から変わっていない。
彼女には俺が持っていないものを持っている。仲間というもの。いや、俺にも仲間はいるけど、仲間と言えるのかどうかわからないし。まぁ、いっかこの話は。
そして、ウルリカちゃんとつながっている霊体。悪い霊にならなきゃいいけど。







「….…ハッピーバレンタインか。」

ポツリと呟くと、その言葉は空気中に消えてしまった。