紙はくろやぎが食べる。

ゆっくりと更新して行きます。ただの自己満足です。

episode4 犯人は…

雷は目を覚ました。目を覚ました場所は学校。自分はもう死んだものだと思っていたから、驚いていた。

「雷⁉︎大丈夫?」

麗蘭が話しかけた。麗蘭はとても心配そうな表情をしていた。

「大丈夫です。でも私どうして…」

「私が、あの人影に攻撃したの。かわされちゃったけど…」

「そうなんですか⁉︎でも、ありがとうございます。」

「うん。お腹刺されたけど、大丈夫?傷は浅かったし、一応手当もしておいたけど…」

よく見るとお腹に包帯が巻かれていた。少し動くと、お腹がズキズキして痛い。

「なんとか大丈夫です。」

「そっか。無理はしないでね?あっ…そういえば、タルトさん自分で死んじゃったって言ってたよね。タルトさんも、もう……」

「あぅ…」

しばらく沈黙の時間が過ぎていた。麗蘭がハッとして雷に言った。

「あのぬいぐるみ落ちてないかな?」

「落としているといいですけど…でもなんで?」

「あのぬいぐるみ、お寺とかで供養してもらったほうがいいんじゃないかなーと思って…」

「ああ、確かに戻ってみます?」

「そうしよう!」

さっき来た道を戻っていく。来た道を戻りながら彼のことを話す。

「風知ってさ、私タメ口で話してるけど、一つ年上なんだよねwそうとは思えないけど。」

「そうでしたね。風知さんは大丈夫なんでしょうか?男の子に追いかけられてそれっきり……」

「そうだね、生きてるといいけど……あれ?誰かいるよ!……ライラさんだ。」

ライラはぬいぐるみをじっと見つめていた。

「あ!あったんだ!ライラさん。それ、雷に返してあげてください。雷が持って来たので」

「私⁉︎……あぅ…あんまり持ちたくないな…」

「……そうね。あなたが持ってた方がいいわ。」

そう言って、ライラはぬいぐるみを雷に渡す。

「あ、ライラさんに聞きたいことがあったんだ!」

「…聞きたいこと?」

「単刀直入に言うと、この事件について知っていることはありませんか?」

そう言って雷はさっきのページを開き、資料をライラに見せる。

「……ああ、これ3年前の…」

ライラは資料を見ながら話し始めた。

「3年前に、この事件に関わった私の弟がいるの。」

「…弟?」

「そう。当時彼は10歳だったわ。この学校、小学校も一緒にあるでしょ?そこに私の弟は通っていたわ。ある夜、いま私たちがやっているこのゲームをするって言っていたわ。私は、そんな夜中に外に出てはダメって言ったんだけど、隙を突かれて出て行ってしまったわ。その日の夜は全然帰ってこなかったの。…それから、この資料の新聞にも載ってる通り、学校で殺人事件が起こったのよ。だけど、私の弟は行方不明。死んではいなかったから、私は探し続けているわ。今でも。」

「…そうだったんだ。」

「……だからこのゲームはしてはいけないって言ったのに…」

ライラはため息をついた。

「……もうすでに、死人も出ているでしょう?」

「…はい。」

「……生き残れること自体、運がいいからね。そうそう、屋上への鍵見つけたんだけど、屋上へいかないかしら?どこにも行くあてないでしょう?」

二人は頷いてライラの後についていく。




屋上の鍵を使って開ける。夜風が当たってとても心地よかった。いまの状況で心地いいというのはおかしいかもしれないが、そう思わないと怖さでどうにかなりそうな気がしたからだ。
屋上の奥に、風知はいた。

「……風知。無事だったのね。」

風知はゆっくりとこちらを振り返った。そして雷たちを見ると、すぐ笑顔になった。

「うん。男の子から逃げて、ずっとここにいたんだ。見つからなくてよかったよ。」

「本当だよ!ずっと同じところに留まってたら見つかっちゃう可能性が高いからね!」

「あははw運がよかったんだよ。運が」

風知はいつも通りの笑顔でみんなに話す。

「……でも、笑い事じゃないわ。あれほどやってはいけないって言ったのに。」

「うん、ごめん。死んじゃった人たちには申し訳ないって思うし、償いもするよ。」

風知がこちらに近づく。だが、雷だけ異変に気がついた。風知が手に持っているものと、風知のさっきの発言…

「来ないでください!」

「ああwごめん。男性恐怖症なんだっけ?w雷には近づかないようにするからさw」

「違います。風知さんが手に持っているものです。それはなんですか。」

雷は、風知の手を指差す。それで麗蘭たちも異変に気付いた。

「何って…刺し身包丁だよ?w持参してきたんだ。護身用的な?」

「貴方が、貴方が小傘さんたちを殺したんじゃないんですか?」

雷は少し震えていた。そのせいで、声までも震えていた。それは、怖いせいなのか、怒りから来ている震えなのか。それとも、お腹の傷が痛かったからなのか。誰にもわからなかった。

「は?w何言ってるの?w」

雷は少し戸惑ってから、こういった。

「タルトさんの死体は追いかけられて見ていませんが、小傘さんの死体は見ました。その時、小傘さんのお腹には果物ナイフが刺さっていましたが、果物ナイフで刺すより深い傷が付いていました。あと男の子が持っていた包丁よりも。……そう、風知さんが持っている刺し身包丁ぐらいの深さでした。だから、小傘さんは自殺したわけでもなく、男の子が殺したわけでもない。あと、ヒスイさんを階段から落としたのも風知さんでしょう?その白いマフラーも見えました。布じゃなくて、マフラーだったんですね。見た時、首元ぐらいにあったと思うし。よく考えてみれば、マフラーをしているのは風知さんだけですものね。それに、私たちは死人が出た。なんて一言も言っていないのに、貴方は『死んじゃった人たちには申し訳ないって思うし、償いもするよ。』と言いました。それは、貴方が殺したから分かっていたんですよね?死人が出たって。」

雷の発言を黙って聞いていた風知が笑い始めた。

「あはははっそうだよ。俺が殺したんだよ。ご名答。すごいね雷は頭が働くねwすっごく羨ましいよ。」

「なっなんで殺したのよ。」

「なんで?あはっwよく犯罪者が言うじゃん。むしゃくしゃしてやったってさwそれと同じだよ。」

クスクスと不気味に笑いながら風知は言う。元のチャラけた風知なんて面影もなかった。

「…じゃあ、なんの罪もない人をむしゃくしゃしたからって理由で殺したわけ?そんなの、許すわけないじゃない!!」

いつも冷静なライラが大声で怒鳴った。その場にいる全員が驚いた。でも、風知はまたクスクスと笑いながら言う。

「何の罪もない?w確かにないけど、俺にとっては、俺より優れているお前らが大っ嫌いだったんだよ!」

「…え?」

「俺より優れて、優しくてムカついた。だから殺した。あははっ」

「そんなこと、誰も思っていませんよ!だって、風知さんは誰よりも運動とか得意じゃないですか!成績だってそんなに悪くはずないのに」

そんなことで殺人を犯す人ではなかったはずだ。少なくとも雷たちはそう思っている。

「……無駄よ。何言っても。狂っているもの。」

「だから、俺より優れているやつは俺が殺す。だからお前らも、今すぐ…」

刺し身包丁を構えて、殺しにかかろうとした瞬間、屋上の扉が開いた。一斉にそちらを見る。そうすると、中から男の子が出てきた。赤い髪の男の子。