ラピスラズリ
なぜこんなことになってしまったのだろうか。
俺がいけなかったんだろうか。
今となってはもう分らない。
もうどうだっていい、諦めろって本当の自分が言ってる気がする。
意識が遠のいていく……
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「無理無理無理無理‼︎追い払うなんて無理‼︎」
「いいじゃん、な?虫ぐらいさ。お前のヘタレを直すいい機会じゃん?」
「でも、怖いし…」
今嫌な状況となっております。俺の嫌いな虫を追い払えって友達が言っています。ヘタレを直すいい機会って言ってもそんなんでヘタレ直せるんだったら、苦労しないよ…
「あ…虫飛んだ」
「えっ⁉︎」
さっきまで廊下の柱に大人しくとまっていた虫が今は俺に向かって急接近している。俺の顔はどんどん青ざめていきその場から走って逃げた。
「はぁ…はぁ…あー、もう嫌だな」
俺はヘタレを直したいって思ってるけど、なかなかそうは行かない。自分の性格を直すって言うのは人が自力で飛ぶっていうくらい難しい。
家に着くと玄関前に怪しいダンボール箱があった。
「え…届け物?俺何も頼んでないよね…」
怖いけど俺の好奇心には逆らえなかった。恐る恐るその箱の中身を見てみるとそこには無駄に厚い厨二っぽい黒い本と、禍々しい小瓶に入っている変な液体があった。
「なにこれ…」
厨二っぽい黒い本を手にとって読むとそこにはあの禍々しい小瓶の説明が書いてあった。
「えと、日当たりの良いところは避けてください、洗濯はしてもオッケー…え?洗濯できるのこれ。捨てても戻ってきます。……怖。えーと、これを飲むと性格が変わります⁉︎え⁉︎嘘‼︎……だよね、だって怪しいもん毒とか入ってたら……でも…」
嘘だとは思う。だけど、きになってしょうがない。このままじゃ夜寝れなくなっちゃうかも。
「捨てても戻って来るんだよね…じゃあ、覚悟して飲むか…」
気は進まないがやっぱり好奇心には勝てないようだ。
「これでヘタレな性格を直せたらいいんだけど…ああ、どうしよう。毒とか変なもの入っていたら…やっぱりやめようかな。うー…どうしようどうしよう」
優柔不断なのも俺の悪いところだ。ここは意を決して飲むしかない。
一気に飲んだ。
むせた。
咳き込んだ。
最悪だ。
味は無くて水を飲んでいるみたいだった。
しばらく経っても何も起きなかった。
「あはは…やっぱりね…まぁ嘘だもんね。これで性格が変わったらギネス新記録だよ。…いや、ノーベル賞か。」
ダンボール箱と黒い本と空になった小瓶を持って俺は家の中に入った。その日の夜はぐっすりと寝れました。…が問題は次の朝です。目を覚まして起きて制服に着替えたのはいいけれど、台所に行ったら朝食が置いてあるのです。両親は共働きであまり家に帰ってこないし、俺は作ってないし……誰⁉︎
「よお、やっとお目覚めかよ。」
泥棒が入って朝食を作ってくれたのかと思い、何か武器になるものを探していたら朝食を作ってくれただろう張本人に見つかってしまった。もうなんでもいいから、そこらへんにあったほうきをとって身を構えた。戦えないけど。
「どうしたwほうきなんか構えてw」
「は…?」
目の前に俺がいる。いや違う瞳の色が赤だ。それにつり目で怖そう。俺にそっくりだけど…いやでも、似た人なんてたくさんいるよね。うん。
「おーい?大丈夫か?」
俺にそっくりの人が目の前でヒラヒラと手を振る。何となく俺も力なく振り返した。
「ふぅ…まぁ早く朝食食えよ。冷めるし、遅刻するし。」
「え?ああ‼︎はい」
お母さんみたいなことを言う人だった。怖そうな人だけど、案外優しい?……いやいやいやいやいや‼︎不法侵入だよね⁉︎
「あのあの…君は誰ですか?」
勇気を出して聞いてみた。俺にしてはよくできたと思う。
「ん?ああ…んー……名前ねぇ…ラズリ…かな。」
「ラ…ズリ……あ‼︎俺はラピスだよ‼︎」
「うん。知ってる。」
「えっ⁉︎」
なぜ俺の名前を知っているのだろうか。ますます怪しい。だけど朝食の目玉焼きは美味しい。
「俺はお前だから。」
なんか意味深なこと言ってきたぞこの人。よく分らない。
「まあ、まだ分からなくても良いんじゃね?その内思い出すと思うし。」
そういえば同じ制服着てる。まさかこの人は俺と学校同じなのか⁉︎
「あのー…学校……」
「ああ、遅刻するな。行くか」
そう言うとラズリは立って食器を洗い始めた。俺も食器を流し台に置いた。
ラズリの手際の良さによって食器は早く洗えた。そしてソファーにあったカバンを持って、
「ほら、行くぞ」
って爽やかスマイルをしてきた。俺にはできないだろう。羨ましい。
「うん。今行く」
玄関を出て少し歩くと前にホワホワした子がいた。あの感じはアリスに違いない。
「おはよう。アリス」
「あっ‼︎ラピスさんにラズリさんおはようございます」
俺はこの人の笑顔が大好きだ。見ていると癒される。
「あれ?ラズリと前にあったことあるっけ?」
確かラズリの名前も読んでいたような…
「え?ラピスさん。ラズリさんは双子の弟…ですよね?」
「……」
「弟⁉︎」
「はい?……あ‼︎遅刻してしまうんでまた‼︎ラピスさんとラズリさんも遅刻しないように」
アリスは走って去ってしまった。アリスとは違う学校だし、年も離れてるし。
「…ラズリ……弟?」
混乱している俺をほっておいてラズリはスタスタと歩いて行ってしまった。
「まっ…待ってよ‼︎置いていかないで」
「おせーよ」
「双子ってどうゆうこと⁉︎俺君のこと…」
「……昔からいたぜ。俺は。」
「へっ⁉︎」
また訳のわからないことを……
「おはよー」
そうこうしている間に教室についてしまったみたいだ。俺は椅子に座って近くにいた友達に聞いてみた。
「ねぇねぇ、ラズリって昔からいたっけ?」
「は?頭おかしくなったか?」
その発言にイラっと来ました。まぁ怒るほどの勇気は俺は持ち合わせてないので怒りませんが。
「昔からいたってお前、双子だろ?性格は全然似てないけどなwラズリは積極的だもんなー。お前はー…www」
「わっ悪かったね‼︎……ヘタレで消極的で…うゔっ」
「あーあ。泣くなよー。悪かったってw……まったくヘタレなんだから」(ボソッ
最後に変なこと聞こえたけどなかったことにしよう。
「ってかさ、ラズリ見えなくね?女子に囲まれてさw人気あるよなー」
確かに…不良に絡まれてるみたい。
「人気⁉︎」
「ん?ラズリ人気だろ?知らなかったのか?」
わー……羨ましい。まぁ俺は目立つの嫌だけど。
「だんだん兄の方のお前は影が薄くなっていってるような気がするよw」
「……っ」
何だろう嫌な予感がする。このままラズリに俺の存在を消されそうな気がする。
ふと女子と女子の間からチラチラ見えるラズリの方を見ると一瞬ラズリがこちらを見て黒い笑みを浮かべていた。
………気がする。