episode1 お昼休みの出来事 ※学パロ注意
「この学校にさ面白い噂があるんだけど」
その言葉からすべてが始まった。
「はぅぅ、なんで私までこんな真っ暗な夜の学校に来なきゃいけないんですか…」
雷は学校の昇降口のガラス張りのドアをペチペチと叩いた。
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事はお昼休みから始まった。友達の麗蘭(レイラ)と昼食を食べていた時、風知が雷に駆け寄った。
「ひぃぃっ⁉︎そっそんなに近寄らないでください!怖いです!!」
そう言って雷は素早く机の下に隠れた。
「あ、ごめんw男性恐怖症のことすっかり忘れてたww」
ケラケラと笑いながら風知は言う。
「本当に謝る気あります?」
「ごめんって!そんなに怒らないどいてーw」
いつも笑顔の絶えない風知だったので、許すことにした。根はいい人だから。
「おー!風知じゃん。何の用ー?」
もぐもぐとおにぎりを食べながら麗蘭が言う。口に米粒が付いているが、風知は気にしなかった。
「そうそう!!この学校にさ面白い噂があるんだけど…」
「噂…ですか?」
机の下から雷が覗き込む。風知はそれを見て、なぜかウサギを連想させた。それと同時に、おどおどしている雷が可愛いと思ってしまった。だが、その想いを誤魔化すために笑った。
「うんw噂。この学校に、幽霊が出てくるんだけど、それに捕まらないで逃げ切れたらなんでも願いを叶えてくれるんだって!wwそれで検証しに行きたいなーってw」
「ゆっ⁉︎…いたっ」
雷は幽霊という言葉にびっくりし、体がビクッと揺れて、机に頭をぶつけてしまった。
「幽霊!願い!面白そう!その話乗った!!」
麗蘭は机をバンバンと叩きながらアピールをした。今にも机が壊れそうな勢いだ。
「そう言うと思ったぜ!他の人にも誘っておいた。先輩とか。」
「そっそれって、私も行かなきゃいけない感じですか…?」
「もちもちでしょ!!」
「あうぅぅ…」
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「家から出たくなかったのに、麗蘭さんが無理やり連れてくるから…」
雷は今にも泣きそうな顔をしていた。いや、もう泣いている。
「いいじゃん!泣き虫を克服するチャンスかもよー?」
ポンポンと雷の肩を軽く叩く。それでも雷は泣き止まない。
「……やってはいけないのよ。こうゆうこと。霊を呼び出すなんて。」
ライラが落ち着いた口調で話す。隣にいた風知は笑いながら言葉を返した。
「とか言いながら来ちゃってるじゃないですかーww」
「……止めても無駄だと思ったから心配で来たのよ。」
ライラはこれを実行するという風知を必死に止めようとしていたが、諦めてついてきてしまったのだ。
「おー☆夜の学校ってさ雰囲気あるよね♪」
「そっそうだな。ふっ雰囲気ありすぎっていうか……」
「あれあれ?☆タルトくんビビってる?♪」
「んなわけねーだろ⁉︎全然怖くもないし、ビビってもねーし!!小傘こそ怖がってるんじゃねーのか?」
「ボクー?ボクは全然怖くないよー☆」
「そうかよ。良かったなー」
そんなことを話して、タルトは恐怖を紛らわせていた。
「よし!ということでだ。早速入ろうぜ!ここの窓から入れるからさ!見回りの先生が鍵を閉めてなければ。」
風知が窓に手をかけると、カラカラと音を立てて窓が開いた。窓が開くと、風知はすぐに靴を上履きに履き替えて、学校の中に入っていった。
「ほらほら!みんなも早く早く!」
次々に中に入っていく仲間たち。でも一人だけ、中に入れない子がいた。それは雷だった。
「ほら、あと雷だけだよー?入らないの?」
麗蘭が手を伸ばして雷を引っ張ろうとする。が、雷はおどおどしてなかなか入らない。
「むっ無理です!怖いです!幽霊とかお化けとか怪物とか妖怪とか!!!!」
雷はパニクっていた。パニクっていたからこそ、ある言葉ですぐに学校に入った。
「…ねぇ、雷。後ろにいる髪の長い女の人って…」
「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
麗蘭の手をがっしりと掴んで、すぐに学校の中へと入った。もちろん髪の長い女の人なんていない。
「うぅ…騙しましたね…」
「えへへーっだって、雷がいないと始まらないもん!ぬいぐるみ作ってきたんでしょ?霊が乗り移るという。」
「はい。これですよね?」
雷がバックから出したのは可愛らしいテディベアだった。目がまん丸でとても可愛い。
「ぬいぐるみがないと、霊が来ないからなー。雷に頼んどいて良かったww」
「そのぬいぐるみに霊が乗り移るんだっけ?☆」
「んーwちょっと違うかな?w確かに乗り移るけど、ただの器に過ぎないからそのままポイってされちゃうよw」
風知は近くにある中等部の2-5の教室に入る。そこは、雷と麗蘭の教室だった。その後にみんなが入っていく。
「なっなんで私たちの教室なんですか⁉︎」
「え?w近かったからww」
「うぅ…」
風知が、真ん中ぐらいにある生徒用机に人形を置いた。その横に、みんなが持参したよく切れそうな刃物を置いた。
「これでよしっと!じゃあ、みんな夜明けまでに逃げ切ってねww」
「思ったんだけど、もしも幽霊に捕まったらどうなるのー?」
麗蘭が元気よく手を挙げて発言をした。みんなはその言葉を聞いて、沈黙してしまった。そこまで考えていなかったようだ。一人だけ除いて。
「さっさぁ?どうなんだろうな。考えてなかったわww」
「はわ⁉︎どうなっちゃうんですか私たち!」
刃物をぬいぐるみの横に置いた以上、このゲームは始まっている。今更取り消せない。それはみんなわかっていた。今、幽霊が来てもおかしくはない。
一人、口を開いた。
「………捕まると死ぬわ。…そう、前にもあったように。」
「しっ⁉︎」
「どっどういうことだよ!ライラいっ意味わからない」
みんながパニックを起こしている。それもそうだ。死ぬなんて考えていなかったから。
「……まぁ、それもそうよね。幽霊…いや、鬼は刃物を持って追いかけるんだから。そのぬいぐるみの横にある刃物でね。」
タルトはそれを聞いた瞬間急いで刃物を取ろうとした。が、ライラに止められてしまった。
「…やめときなさい。下手に触ると死ぬわよ。」
タルトはビクッとしてその手を止めた。
「ねっねぇボク、もう帰りたいかな☆」
そう言って小傘は後ずさりをし、ドアに近づいたら走って教室から出て行った。
「…ここから出られないと思うわ。」
「そっそんなの試してみなければどうだかわからないだろ⁉︎」
タルトが出て行く。パニクっている人に何言っても無駄だった。
雷も逃げる。麗蘭も逃げる。
「……だから、あんなにやるなって言ったのに。私は隠れるわ。じゃあね風知」
ライラも出て行った。教室に一人風知だけが残った。ぬいぐるみと二人っきりになると、空気が重くなったような気がした。風知も急いで出た。出た瞬間雷の悲鳴が聞こえた。